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MotoGP/WSBK/Rebel250/台湾/音楽。Tech3チームマネージャーのニコラス・ゴヨン様を爆推しする。

ニコラス・ゴヨン 2023年5月インタビュー和訳(on track off road)

先日見つけた2023年のニコの長いインタビュー記事を和訳した。

 

2023/5/6公開ということだけはっきりしている。同時に掲載されているサム・ロウズのインタビューはヘレスで行われたと記載されているので、ニコのインタビューも同じ時期にされているはず。というわけで、ニコがチームマネージャーに就任して、実際に2023年シーズンが開幕して1ヶ月強、経過した状態のインタビュー。時期柄なのか、ニコにライダーに関する話をさせるのではなく、ニコの仕事に終始フォーカスした内容のインタビューになっており、ニコの内面にも触れられる部分があり、それは本当に珍しく、とても興味深かった。私が確認できたかぎりニコのインタビューの最高傑作。

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https://ontrackoffroad.com/2023/05/06/2023-may-edition-moments-of-control/

 

「コントロールの重要度?」

ーニコラス・ゴヨンはMotoGPのピットレーン内にいる11人のチームマネージャーのうちの1人である。約20年をかけてGASGASファクトリーレーシングTech3の出世の階段を登ってきた。彼の新しい役職と、MotoGPが変容していく中で何が伴われるのかについて、このフランス人に話を聞いた。

 

ー我々はニコ・ゴヨンをサッカーの「選手兼監督」に例えることができる。その思慮に富み、雄弁なエンジニアは、この類似性を評価した。ゴヨンには2023年にかなりのタスクがある。数少ないMotoGPのチームマネージャーの中で最も新人であるというだけでなく、長い間IRTA会長のエルベ・ポンシャラルのリーダーシップと強く結びついた構成の出身である。加えて、2022年…クルーがMoto2の前年トップライダー2人を擁していたが、完全に新しい選手に変える選択をする前に、やっとトップ10を数回取れた年だが…そのネガティブな軌跡から逆転するための新しいブランドを扱うことにもフォーカスしている。事実上、それは一掃だった。ゴヨンは「更衣室」から出てきた。采配を振るうために、Tech3チームの雰囲気とを方向性を指し示すために。すでにチームは、第一ラウンドでのクラッシュによりポル・エスパルガロが長期の負傷を負うという第一の難関を経験している。2023年のMotoGPは、20回の開催と、スプリントと、濃縮されたスケジュールのおかげで、さらに強烈さを増しており、ルーキーであるゴヨンの手には、かなり多くのタスクが抱え込まれている…

 

―あなたがチームで過ごしてきた長い歴史は、クルーチーフからマネージャーへの転身の助けになったことでしょうね…

 

ニコ「ええ、そうですね。私は約20年間、このチームで働いてきて、一つずつ階段を登ってきました。私はMotoGPのデータエンジニアとしてスタートして、それからクルーチーフになり、今は最終的にチームマネージャーです。私はメンバーのことをよく知っていますので、組織を管理して、運営して、変えて、グループの雰囲気をつかむことは……話を聞けば、緊張感や嬉しさの度合いを感じることができるので……人々を助けたり、雰囲気に働きかけたりすることを即座にできるということになりますし、より効率的にもなります。時々メンバーは変わるものですが、その知識があるということは優位なことです」

 

―サッカーでは、選手兼マネージャーとか、更衣室からマネージャーに異動した人とかがいます。それはグループ全体の調整を意味することになります。その点、あなた方は問題はありませんか?

 

ニコ「まあ、今日ポール・トレバサン(ポル・エスパルガロのクルーチーフ)と話したのですが、「私がこっちに来ると邪魔ですかね?」って彼に言わなきゃいけませんでしたね。明確に、私は技術的バックグラウンドがあって、技術面が好きなので、ある意味では、あの仕事のそういう部分が恋しいですよ。チームマネージャー的には、誰でも独自の専門分野を持っているということを私は理解していますし、意見があります。私は仕事のストーリーを追うのも好きです、設定とか、誰が何に対して働いているかとかをね。とにかく、ポールの答えはポジティブなものでした!そしてサッカー選手の例について話せば、有利だと思いますね、チーム全員の仕事を多かれ少なかれ理解していますから。自分がそこにいたわけですからね。要望されることもわかるし、メリットとデメリットもわかっているので、私にできる限り手助けをしたいと思います。私はこの役職で、技術職のメンバーを助けることができると思います」

 

―クルーチーフとしての現場の仕事がまだ恋しいですか?

 

ニコ「ええ、ある意味ではね。クルーチーフは問題を抱えている一人のライダーともっぱら働くわけですが、その役割は、技術的なソリューションを見つけることです。素晴らしかったですよ。問題解決というのは、技術者であることの「キー」となる部分でした。今はもっと管理業務が増えていますが、私にとっては新しく、興味深いことです。日々、何かを学んでいっています。技術的な面では、何が起きているかをこれからも常に注視しますよ、知っていることですし、好きですからね。メンバーと、チームの人間的な面をマネージするには、特定のスキルが必要です」

 

―どんなふうに興味深いのですか?

 

ニコ「自分の技術的な視点から、問題がいつ起きえるかとか、メカニックやチームの一部が不満を感じるかとかを理解できます。過去の経験がその助けになっています。もし私に一切技術的な下地もなく、新しいチームに入らなくてはいけなかったとしたら、そういう近道はなかったでしょう。私の最初の仕事の一つは、今シーズンの新フォーマットにチームを適応させることでした。2022年は我々は極めて限界に達しており、変化を起こす必要がありました。それで内部の体制を変更して、追加の人員を雇用しました。この新フォーマットに備えるために、ポジションを変更しました。作業方法も変えました。クラッシュとそのための修理が、セッションの間に発生する可能性が、土曜日は特に高まるためです。予選ではクラッシュの機会が多いですが、バイクを2台ともスプリントレースに用意しておく必要があります。このタイムテーブルのために我々のパフォーマンスを確かなものにする必要があったので、組織の再構成につながりました」

 

―この仕事に就くことに躊躇はありましたか?

 

ニコ「いくらか迷いましたよ、自分にそれができるだろうか、その仕事を好きになれるだろうか、自分が適した人物だろうか、と考えました。明らかにエルベ(・ポンシャラル)は少し後ろに控えたがっていたので、私はメリットとデメリットを確認して、よく考えて、新しい経験に挑戦することに決めました。それに、クルーチーフでいることは非常に緊張感のある事なんですよ。朝の7〜8時にガレージに入ったら、外に出るのは夜の8時で、太陽を見ることはないんですから!時にはランチする時間さえないこともあります。まあ、ちょっと誇張しているかもしれませんけど、極限まで膨大なエネルギーを必要とする仕事ですよ。昨年は、ご存じの通り、我々は非常に悪いシーズンを過ごして、これは私にとって重大なことでした。私はちょっとうんざりしてしまいましたね。だから、あの機会が訪れた時に、正しいタイミングなのだと思いました。年末にどのようになるか様子を見ますが、今のところ私は非常に満足しています」

 

―クルーチーフはライダーと会話し、何かを試して、すぐにリアクションを得ることができます。今のあなたは、即座に話すよりむしろ、数か月にわたって進歩状況を見たり、検討するにあたってチーム全体を考慮したりしますよね…

 

ニコ「もちろん、すべての分野で楽にやれるというわけではないですね…ライダーとセッティングについて、それを好むか好まないかを会話するようなシチュエーションが、私の最もやりやすいパートです。だからそれを定例的にやることもあると思いますが、我々は今年、適応を進めていかないといけません。これまでと違ったポジションから学ぶことはよいことですし、それが私にスキルを身に着けさせてくれることを期待しています。ボスたちが2023年の終わりにどう評価するか様子を見ますが、私は常に、物事をポジティブにとらえるように心がけますよ。私が最終的にうまくやれるかダメかはまた別の話です」

 

―影響力に関して、他のチームマネージャを参考にすることはありますか?

 

ニコ「はい、確かにあります。一番近いのはフランチェスコ(・グイドッティ。レッドブルKTM)で、私の近くにいるからなのですが、ガレージとか、彼がメディアにどのように話しているかとか、ピエラ・モビリティグループが本当に我々に求めていることは何なのか、私に期待していることは何なのかとか、観察していますよ。彼らはチームにより良いパフォーマンスと、もう少しスムーズな運営を期待していますね。ですから私はよく聞き、よく見て、私が求められる部分で手助けをするようにします。より人間的な部分かもしれないし、より技術的な部分かもしれませんが、場合によりますね。今はこういうことをする時間が増えましたし。ある意味では、今までの仕事よりも重大な仕事です。私がクルーチーフだった時は、自分のチームの最年長で、ガレージの中とか、ピットの壁の中とかの、自分のチーム内を運営する仕事でしたからね。我々は小さいチームで、時間をかけて成長しました。そして、私が何もかもをできるわけではないということを知っていました。ここ数年は、クルーチーフの仕事はますます厳しくなっているように感じています。GASGASがやってきて、我々が「GASGASファクトリーレーシング」になり、本当のワークスチームのように運営されるようになって、我々は組織化される必要がありました。今は私にはパドックをチェックしたり、他のチームを観察したり、いろいろな人と会う時間ができました。過去はこういうことができませんでしたが。時間がなくてね。おそらく、我々の古いシステムは、限界に来ていたのだと思います。今は、どのようにさらに改善していくかを考える時間を持つことを楽しんでいますよ」

 

―難しい質問をしますね。2022年に何が起きていたのかを不思議に思っている人もいると思います。Moto2で最速であったライダーが二人いたのに、両者とも目立った結果を出すこともなくチームを離れました。チームマネージャーとして、今、Tech3をある程度「再構築」する必要があると感じますか?

 

ニコ「(溜息をついて)厳しかったですね、多くの理由によってね。我々はいつでもベストを尽くします。去年もベストを尽くしましたが、上手くいきませんでした。今年もベストを尽くしますので、もっとうまくいくことを願いますよ。すでにある程度の効果が出ていると思います。あれは、たくさんのネガティブなことの積み重なりだったと思うんですよね、それがあの残念なシーズンをもたらしたのだと思います。今年もチームは変わってなくて、2シーズン前には同じ状況で、MotoGPで2年目のミゲール・オリベイラがレースに優勝していました。その時、チームは悪くなかったですよね…でも2022年に悪い時期を過ごし、突然人々が「ひどいチームだな…」なんて言うようになりました。これは正しくないですよ。あくまでその時の状況次第なんです」

 

―物事がうまくいかなかったという事実のために、メンバーをピックアップしてリセットする必要があったんですか?

 

ニコ「まあ、我々は構成を変え、何人かをガレージに迎えました、特にライダーをね。ライダーからは多くのことがもたらされます。雰囲気の多くがそうですよね。当然、もしライダーがいつもネガティブだったら、雰囲気はよくならないでしょう。ライダーと、周りの人と、チーム。このすべてが一緒に雰囲気を作り上げるのです。今年は違っています。ウチにはポルがいて、本当にポジティブな姿勢をもたらしてくれました。彼は本当にナイスガイで、常にチームのために彼の持つ全てを捧げていることを、我々は知っています。また我々は「適切な」チームを作ろうともしました…これは数年の間私が実感したことなのですが…我々はライダーと団結する必要があるためです。正しいチームを作るには、正しい態度も必要です。これがポル側で起きたことです。我々は本当に一緒にうまくやってきました。例えば、ポルはTech3のワークショップに参加した数少ないライダーの一人なんですよね。この冬、彼は我々を訪ねてくれましたよ。ほとんどのライダーは「はい!行くと思います」…と口では言うんですけど、実際には来ませんね。ポルは来ましたね。ポールと一緒に来て、2日間、彼らの時間を費やしてくれましたよ。これはささいなこと、細かいことなんですけど、最後には大きな意味を持つんです。パドックの外、グランプリの緊張した雰囲気の外では、心から会話することができますし、ライダーが我々とともにありたいと思っているという姿勢が見受けられました。これがいいストーリーの始まりでした。こういう姿勢は非常に重要です。もう一方にはアウグストがいて、最初から、笑顔で、ネガティブな考えを一切持たず、バイクに乗りに来てくれました。彼はうまくやり、学びたいと思っています。素晴らしい姿勢ですね。スポーツでは、物事は変化していくことを皆知っていますが、もし彼に尋ねたら、彼は今のところ喜んでいて、チームもそうだろうと、私は思いますよ」

 

―最後に、あなたは、これまでで最も厳しいMotoGPシーズンにチームマネージャーになった、と思いますか?

 

ニコ「まあね!今シーズンが長いものになることはわかっていますし、今のところ今年最大のクラッシュももう経験しないといけませんでしたし。それで代役ライダーを探すことを強要されました。楽ではないです…でも年間シーズンというものは常に決して楽なものではないですから、適応しなくてはいけません。誰にとっても厳しいですよ、特にガレージ内でバイクの作業をしている人にはね。私は状況をマネージしていますから、万事が可能な限りうまくいくといいなと思っていますよ!」

 

 

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 ◆ニコヲタの感想

2023年のインタビューだけど、終盤のポルの話題あたりで、「We had Pol and he brought a really positive attitude」と過去形になっているので、ポルティマオで負傷した後に一時離脱していた間に行われたインタビューであることがわかる。あと記事についている画像のバックにレッドブルのロゴがぼやっと見えるので、やはりヘレスで行われたインタビューである説が濃厚。(そして一時離脱中にもすごいほめるほど、ニコはポルを信用していたのがわかる。最終的に、ニコのクルーチーフ時代に唯一3年間担当した最長ライダーがポルだった)

 

ちなみに「Tech3のワークショップ」についてはニコニコ大百科のポンシャラルさんのページに書いてあるのだけど、

https://dic.nicovideo.jp/t/a/エルヴェ・ポンシャラル

5月開催の場合は寒中水泳することもあったようで。。。そりゃいかねえだろうよ!!ってなるんだけどww過去は、2021年の4月か5月かにペトルッチが参加してたはず(当時のSNSをたどるとビーチの画像があったはずだ)当時ペトルッチと不仲を極めていたチームメイトのイケルは不参加で、イケルヲタは当時ヒヤヒヤしたねw

 

ニコの発言の内、「問題解決は技術職である重要なポイント」みたいな部分がよかった。めちゃめちゃわかるわあ……。ユーザーの「困った」を自分の技術的知識で解決できると達成感あるし、人助けになるし、喜ばれる場合もあるし、とにかくめちゃめちゃ気持ちいい by IT運用系技術職。クルーチーフもある意味、運用系エンジニア。自分が仕事で感じている気持ちよさをニコも好んでいたのが嬉しい。共感できる推し…マジ推せる👍

 

ちな2022年のくだりについて、補完としてこの↓動画を見ることで、当時ニコが何を感じていたのかを察することができる。

https://twitter.com/ELFxRacing/status/1544990860026138628

 

改めて、今年はアコスタさん来てくれて本当によかったですね。セパンテストのコメの時点からアコスタさんの態度を褒めちぎってたけど、それも↑のことが下地になってるからだわ。オレでなきゃ見逃しちゃうね。

オブラートに包む天才かよ。