前回ニコチームのクルーの話をがっつりだらだら書いたので、ついでに2021/5/13にリリースされていたニコさんと、その配下のメカニック4人のうちの1人であるトーマスのインタビュー対訳を置いておく。
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・MotoGPでのコミュニケーションにおけるサインボードの重要性
https://www.redbull.com/es-es/motogp-pizarras-comunicacion スペイン語版
https://www.redbull.com/fr-fr/motogp-panneautage フランス語版
チームとライダーの間のコミュニケーションでもっとも信頼性の高い手段、ボード。MotoGPではこの20年間で少し変化があった…
ボードを担当するメカニックは理解しておく必要がある。
「何しろ腕を最大限伸ばせるようにしないといけないスね」
この作業を担当するKTM Tech3チームのメカニック、トーマス・ルバンテルはそう話す。MotoGPマシンで使われている洗練された技術にもかかわらず、このスポーツではいくつかの側面で古い伝統が運用されている。何十年も、ピットウォールで使われるボードはあまり進化してこなかった。
レースにおいても同じ話になる。メカニック達によって振りかざされるボード群。彼らは担当ライダーに生の情報を知らせる。ラップタイム、順位、1人以上の競争相手に対して遅れているのか有利なのか、マッピングの変更、何周したのか、はたまた、何周残っているのか…。
「トラックに出ているライダーに情報を伝達するのには、ボードが一番いい手段っス」
トーマス・ルバンテルは話す。クルーチーフのニコラス・ゴヨンと、Tech3チームで競技をしているバレンシア人ライダーのイケル・レクオーナとの間の、伝達役である。
しかしここ数年、MotoGPカテゴリーのバイクには「デジタルコントロールパネル」が搭載されている。これはライダーが、レースディレクションからもチームからもリアルタイムな情報を得られる「ディスプレイ」があるということだ。レーススチュワードはライダーに走行をやめさせることができる、特に危険な場合だ。さもなくばレギュレーション違反でペナルティを与えるか、資格を剥奪することができる。その一環として、チームにはライダーに知らせるための所定のメッセージ設定がある。過去はクラシックなボードでしか伝達できなかったメッセージだ。
チャンピオンシップを主催するスペイン企業のドルナスポーツは、チームがこのコミュニケーションのためにコンピューターを使えるようにしている。伝達される情報はレース管理者に監視され、テレビに表示されることもある。
「データ責任者、ないしKTMではストラテジーエンジニアと呼ばれる者が、このオペレーションを担当します」
ニコラス・ゴヨンは説明する。
「私が指示を出すと、彼はそれを書き留めてライダーに伝達します。デジタルパネルの利点としては、古典的なボードよりも少し早く対応できるということですね。ライダーはラップタイム情報をすぐさま受け取ることができます。FPセッションの間、ボックスに戻るように言われればすぐにそれができます、ボードのメッセージを読んで1周無駄にすることもなくね」
「おかげで我々はタイミングを最適化できます、エンジンマッピングを変えたり、新しいタイヤへ変えるために走行を止めさせたりする時に」
イケル・レクオーナのクルーチーフはそう語る。ではピットウォールにはなぜ未だにボードの山があるのか?
「安全性と慣習の問題ですよ」
ニコラス・ゴヨンは回答した。
「ライダーはピットを直進する時は、常時ボードを通してメッセージを情報を得ることができます。それは彼らに自信を与える物でもあるんですよ。他の人用のボードに挟まれてて、必ずしも見やすくなくてもね。それにもし技術的に問題が出た場合でも、連絡を取ることができますね」
バイクのノイズを遮断しながら、指示を出すクルーチーフと会話ができるように、メカニック達はヘッドフォンとマイクを装備する。そしてチームに設置されているモニターでFPとレースを追う。Tech3では、トーマス・ルバンテルは手動のストップウォッチも使っている。
「これでライダーがどの辺にいるかわかるんで、準備する時間ができるんスよ」
彼は説明する。
「セクターごとのタイムもいいんスけど、ピットウォールにいる他のメンバーと会話する必要が出たりすると、見落としちゃうんスよね。なもんで、自分はそんなにスクリーンを見る必要はないっスね」
また、トーマス・ルバンテルはバイクのパーツが何マイル使用されたかをノートに記入している。
「F1では通信で相互のコミュニケーションを取ることができますが、MotoGPではライダーがトラックに出ている最中は、相互コミュニケーションの方法は存在しません」
ニコラス・ゴヨンはそう話す。
「F1ではドライバーはシートに座って、運転ポジションにフィットした状態になります。MotoGPでは常時動いていて、大体、呼吸も上がっているものです。会話できるような余地はないでしょうね。私が通信でライダーに話しかけようものなら、彼の集中を散漫にさせかねません。何年か前に通信テストもあったんですが、決定的なものにはなりませんでしたね」
ゴヨンはそう解説した。
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元記事はフランス語版とスペイン語版が存在する。スペイン語版だけ読んだので、上のはスペイン語版の翻訳。
私はフランス語を少しも勉強したことがなく、フランスの固有名詞のカタカナ表記ができない。例えば「Circuit de Nevers Magny-Cour」→これをカタカナで表記すると「シルキュイ・ド・ヌヴェール・マニ=クール」(by Wiki先生)になるのとかまったくわからん…。
というわけで、実を言うとTech3のクルーのファミリーネームが全然読めないので必要が出るたびにGoogle先生に確認する(だからみんないつもファーストネーム呼びなんだ〜w)結局、トーマスの場合、カタカナ表記を確認できなかったので、ルバンテルであってるかどうか、あんまり自信がない。
で、このググりの最中に知ったのだが、彼は若い頃はライダーだったようだな!
http://mc-yzeure.over-blog.com/article-24927637.html
→2008年、トーマスが耐久レースに出たということが書いてある。写真の小柄なほうのライダーがトーマスに見える。1987年生まれであることがTech3のSNSから判明しているので、当時21歳で、まあ頷ける年齢。多分、同姓同名の別人というわけではないと思うんだけど……。
・そもそもトーマスってどの人かと言うと(20〜21年画像)
この画像。まさにストップウォッチを片手に、イケルにボードを出していた係。下がり眉毛が特徴である。
ちなみに、イケル期にボードのメッセージが読めるレベルで中継映像に映ったのって1回くらいしかないんだけど、2020年のレース序盤に映った時は、下記のような内容だった。
===========
L<数字> →lap。今<数字>周目
P<数字> →position。今、順位が<数字>位
G →gap。
↓<数字> →後ろの人と<数字>秒差
===========
他には「OK」「RUSH!」「BOX」「ACC」っていうメッセージのテンプレも存在するのを各種画像から確認した。OKはレース中まあまあの時に使いそうだし、RUSHは予選で使いそうだし、BOXは主にFPで使いそう。ACCは意味不明。「アクセル全開で行け!」みたいな??
(そういえば、21オーストリアで、雨の中、スリックタイヤで粘った時は、ニコさんはどういうメッセージを出してたんだろうwあまり複雑なメッセージのテンプレは存在しないだろうから、特に何も出さず「お前に任せた」という意思表示をしたのかも?こういうの妄想するの超楽しいんだけど!)
トーマスはこの画像ではイケルの左(というか背中側というか)にいる人。
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・ついで おしごとニコ動
クルーに指示を出す超かっこいいニコさんの、実際の仕事姿が見れる動画のリンクを貼っとく。
https://m.youtube.com/watch?v=FDP3i8VP0vQ
これはポル期。2016年なんで、ポルとのコンビ3年目(最終年)
気が向いたら全文和訳しようと思っている。
これはシャーリン期。2018年マレーシアらしいけど、マレーシアで放映された動画なんだろうか??FPから、赤旗中断とリスタートされたレースが終わるまで。チームの仕事がよくわかる、すごくいい動画だ。
ここのシーンが特に好き。
(55 ・ з・)「マシにはなりましたけど…まだちょっとなにかほしいっすね…ブレーキに…」
φ(ニコ ò_ó )「うむ…スチールディスクのブレーキが必要だな。用意して!」
Σ(・□・;メカ)「全然準備できてねえっスよ!!」
(55 ゚д゚) (ソワソワ)
………こういうのをイケル期で見たかったんだよ!!!!
もちろんFPとか予選とかの中継映像や、Tech3のSNS動画や画像でイケルとニコの会話姿はたくさん見れたわけだけども、交わしている言葉の内容は一度も判明していない…。マスクなし時代に唇の動きで「yeah」とか「ok」って言ってる時ぐらいはわかったが。何話してるのか、断片でいいから知りたかったーーーもう無理なんでしょうけどーーー。
→22/05追記。
つべに完全版落ちてたのを発見!↑ここ会話じゃなかった。
正しくはこうか…
(55 ・ з・)「マシにはなりましたけど…まだちょっとなにかほしいっすね…」
_φ(ò_ó ニコ)「ブレーキか」
(55 ・ з・)「ブレーキ!」
φ(ニコ ò_ó )「うむ…スチールディスクのブレーキが必要だな。用意して!全然準備してなかったやつだ!」
(55 ゚д゚) (ソワソワ)
この完全版のURL → https://m.youtube.com/watch?v=FT8TGdBuzVY
音声がちゃんと入ってる!神よ!あああああニコの声が良すぎる!もう永遠に聞いてたいよ…。ニコボイスのカーナビがほしいよ………200万円くらいなら出すよ…。
あとこの動画のミシュラン技術者のおっちゃんのハゲジョークシーンがいい。
(ニコ ò_ó)「レース終盤にトラックが乾くと思うかい?」
(・_・ 55)「乾きそうですね」
(ニコ ò_ó)「乾きそうか。ではドライ用に2台目のバイクを用意しておくよ」
おっちゃん「雨降ってるよ?(禿頭をさすり、空を指す)感じるねえ」
(-᷅ 〜 -᷄ ;ニコ) 「………;」
おっちゃんのハゲネタに愛想笑いを浮かべるニコさん草ww
ところで、やはりフランス人同士の会話は普通にフランス語を使っているのがわかるね。この動画のおかげで、クルー同士でも、ミシュラン技術者との会話でも、フランス語を使っていることを知った。