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MotoGP/WSBK/Rebel250/台湾/音楽。Tech3チームマネージャーのニコラス・ゴヨン様を爆推しする。

MotoGP ニコラス・ゴヨン2018年(Tech3ヤマハ、シャーリン期)インタビュー 和訳

ニコさんのインタビューで、気に入っているやつ。

SBKのライダーに関する考察の言及がある。

あとテクニカルトークだけではなく、本音がチラ見えする、珍しいもの。

20182月とある。フォルガーが持病のジルベール症候群からうまく回復できず、ギリギリまでTech3を待たせた挙句に2018年シーズンはレギュラーライダーから離脱することを確定させたころの話。ニコさんの失望と苛立ちが大きかったことが伝わってくる……

本音モード一人称を俺、

忖度お仕事モード一人称を私、

Tech3としての一人称複数を我々、

ライダー含めたチーム、その他の一人称複数を私達、で対訳してみた。長い。

 

https://www.crash.net/motogp/feature/890089/1/tech3-crew-chief-talks-syahrin-folger-lorenzostyle

(2018/2/27公開)

 

ーモンスターヤマハTech3のクルーチーフ、ニコラス・ゴヨン氏は、10月の日本グランプリで突然ヨナス・フォルガーが棄権して以来、ライダーの入れ替わり立ち替わりの人事を経験してきた。

そのたった3ヶ月前に、この2人は、フォルガーのホームであるドイツグランプリで、2位という輝かしいライディングを祝ったばかりだった。

フォルガーの退陣の理由となった深刻な倦怠症状は、当初はうまく病名が特定されて冬の間に治療されたとレポートされていた。しかし衝撃的なニュースが報された。フォルガーが戻ってくる1月のセパンテストの、たった1週間前だった。この若いドイツ人は戻ってこないのだと言う。

 

「俺達に何ができるって言うんだ?何もないよ。だから、そのことを考え続けるなら、自我を殺すしかない。そういう段階もあるんだ」

腹をナイフで抉るジェスチャーをして、ゴヨン氏は言った。

「全て終わった、ヨナスは戻ってこないと、真に実感した時、俺は忘れることにした。すごく残念だよ。彼は大きな才能を持っていたけど、どこかに問題を抱えていた。多分、メンタルの問題だ。そしてこれは重要なことなんだ、メンタルのことは」

なんらかの形での不安や精神的ストレスが、フォルガーの問題の引き金になったとますます疑われている。ゴヨン氏は付け加える。

MotoGPライダーは皆ライオンだ。彼らは皆、闘士なんだ。そうなれないなら、それまで。脱落するだけ。すごく残念だよ、彼には大きな才能があって、驚くべきことを成しえて、俺達は素晴らしい年を過ごしていたんだから。

だが、前に進みたいなら過去のことは忘れて、未来のことに集中しなくては」

 

2018年のフォルガーの交代役に到達するまでの長い道のりは、昨年の最後の4ラウンドで3人の代役ライダーから始まった。(野佐根航汰、ブロック・パークス、マイケル・ファン・デル・マーク)それからセパンテストではヨニー・エルナンデス、最後にブリラムではハフィス・シャーリン。

ライダー達の絶え間ない交代に取り組むことは容易なタスクではないが、悪いことばかりではなかった。

「人間的な視点ではいいこともありました。我々は何人もいい奴に出会えましたから」

タイでのテストの土曜日、一時的なチームのキャビンで、ゴヨン氏は言う。

マイケル・ファン・デル・マークはすごくいい奴でしたね。我々は彼と楽しい時間を過ごせましたよ。

前のテストはヨニー・エルナンデスと一緒でしたが、彼もとてもいい奴だった。我々が彼と一緒にやって行くことはできないと知った時、俺は落胆しましたよ。彼はテストに全てを捧げてくれたのに。

彼は本当にシートを得られると信じていたんです。でも最終的には、これはスポーツであって、他者を負かせなくてはいけないんです。多分、ヨニーは才能の面ではほんの少しハフィスに及ばなかった。だから残念ではあるが、これはスポーツですから。

こうして我々は何人かの素晴らしい人々と出会い、楽しい時間を過ごしました。ハフィスは私にとって、この7回のイベントのうち、6人目のライダーです。私はこれが最後であってほしいと期待しますね、我々がハフィスに集中できるように。

前シーズン最後からこれまでの全てのライダー、あと今シーズン雇用できたかもしれないライダー、全員のうちで、私にとってはハフィスがベストでした。

ポテンシャルはより高いし、現時点でベストでしょう、私個人にとっては……スポーツと才能の観点において、ですね、私には彼がナンバーワンに見えます」

 

Moto2において3度表彰台を獲得したシャーリンは、ブリラムテストの後、ヨハン・ザルコのチームメイトとして、2018年のTech3のシートを獲得したことが正式に確認された。

一般的に言って、SBKのライダーよりもMoto2ライダーのほうが、MotoGPでの自分の足がかりを見つけるのに少し時間がかかる、しかしその最大ポテンシャルは高い、とゴヨン氏は感じている。

 

「過去、私はポル・エスパルガロ、ヨナス・フォルガー、あと何人かと仕事をしてきました。Moto2ライダーの方が少し後ろの方(のレベル)から始めることになります。彼らはこんなヘビーでパワーのあるバイクに慣れていませんから。しかし私の経験上は、Moto2ライダーのほうがより大きい伸び代を持っています。恐らくSBKライダーはすぐに接近してくるのですが、そこからトップに近付くまでは時間がかかります」

それは部分的には、年齢にも依存している。

「私が働いて来たMoto2ライダーは若かったということもある。若い頃はより順応性があるものです。私達Tech3におけるSBKライダーとの経験は私個人はトスランド、スピーズ、クラッチローと仕事をしましたが、少し違っています。

特に今のMoto2のレベルはとても高い、皆、競争力が高いですよ。彼らが切り替えるなら、多分もう少し時間はかかるでしょうが、SBKライダーよりわずかに才能は上回っていますね」

 

シャーリンは、MotoGPバイクでの初日は24位、トップから2.368秒差であった。それから2日目にはそのギャップを2.029秒(23位)まで削って、テストで唯一の転倒を喫し、3日目にはトップから1.756秒差となる21位でフィニッシュした。

 

「ハフィスから何を期待できるのか、我々には何もわかりません」

ゴヨン氏は認めた。

「だが彼は本当にいい奴だし、トラックでは我々を驚かせてくれましたよ」

 

ヤマハスタイルとはホルヘ・ロレンソである

「ライダーが交代する時は、かなり多くの変更を頼まないといけないものです。特にMoto2から来たライダーに対しては。何もかもが違うんです。可能な限り早くヤマハスタイルを習得してもらう必要があります、さもなければ苦戦するのですから」

ゴヨン氏は説明する。2016年の終わりにヤマハを離れたにも関わらず、ホルヘ・ロレンソのスタイルが、M1がどのように乗られるべきかのベンチマークとして未だに残っていると言う。

 

ポル・エスパルガロがいましたが、私達みんな、ポルがヤマハスタイルに苦戦していたことを知っていますよね。誰にとっても、ヤマハスタイルとはホルヘ・ロレンソであると、理解する必要があります。あのスタイルは今でもヤマハでナンバーワンです。彼は素晴らしい。

だから新しいライダーはこのスタイルに合わせる必要があります。スムースで、バイクを動かさない(スライドさせない)。これをできるだけ早く習得させることが、新しいライダーが入って来た時の我々のターゲットになります。これをライダーに再現してもらいたい、これこそがこのバイクの乗り方だから」

このタスクにおいてハフィスの進捗はどう?

「これがハフィスが我々を驚かせた点ですよ。彼はかなりのことを変えることができたんですから。真面目な話、かなりのことを彼に頼んだんです。彼は全部をいっぺんにはやりませんね。でも我々は光るものを見たと言わざるを得ません。彼は初めてバイクに乗ってから、大きな進歩をしました。

残念ながら、今日(テスト2日目)は少々転倒がありました、完全に初心者の転び方です。それがなければ、もっと向上していただろうと思いますよ。

いくつもとてもいい点がありました、例えば全ての出口で彼はその前よりもタイムを更新したり。これは本当にポジティブなことで、どのライダーでも見れるようなことではないんです。

ええ、我々はその時ガレージでは少し驚きましたね。今の疑問点としては、彼がトップに到達するまでのマージンです。でも今この時点で、彼は大いに進歩しました」

 

ーどこから始める?

話を少し戻す。新しいライダーがチームに来た時、過去MotoGP機に乗ったことのないルーキーの場合、挨拶して、それからどうする?

 

「我々は"ようこそ、少なくともこのテストでは共に仕事をしよう"と言う。そしたら各々、仕事をするだけさ」

そうゴヨン氏は答えた。

「我々はライダーにアドバイスを与える、ライダーの話すことを聞く、データをチェックする、比較する……私達はヤマハのファクトリーデータを見る素晴らしい機会があるんです、ヤマハの人間はみんな知っていることなんですが。ですから我々はヴァレンティーノのデータ、マーベリックのデータ、そして我々のチームのザルコのデータをチェックします。

ヤマハには3人のトップライダーがいます。ハフィスは新人ですから、どこを向上する必要があるかは簡単にわかります。データ確認の上、彼が何をすべきかを伝えます。成功する時もあるし、しない時もありますから、失敗した時は補助を試みます。このようにステップバイステップでやっていってますよ」

 

ーライダーコーチはいない。撮影はない

MotoGPで最高の人々は専任の「ライダーコーチ」を持ち、トラックの側で観察をして、どのように向上するかフィードバックを受けている。この延長線上にあるのが、特注のカメラ映像で、チームメンバーがトラックの一部を撮影し、ライダーが後で見たり分析したりできるようにするのだ。テストではグランプリとは違い、レビューするためのライブTV映像がないため、どちらもより重要な役割を持つ。

シャーリンのデビューにおいては、「データを信頼する」ことに加えて、ザルコのマネージャーから映像のフィードバックを委ねられた。

 

「そうですね、もっと有名になったり、もっと資金があるなら、(コーチなりなんなり)持てるなら。ヤマハではビニャーレスにはウィルコ、ヴァレンティーノにはカダローラが付いています。観察してアドバイスを与える誰かを持つライダーは増えていっていますね。それは非常に、非常に大きな助けになると確信しています。

LCRなどの他のチームでは、そういう(トラックの側で撮影する)役がいて、ビデオセッションを開催するんです。これはライダーには本当に本当に助けになるんです。マルケスもかなり見ていると聞いてます。

残念ながらウチのチームは今のところ誰もいないので、データを信じますね。

ウチでトラック側で観察してヒントやアドバイスを我々にくれるのは、ザルコのマネージャーのローレン・フェロンだけです。彼の言ったことは非常に正確でした。我々がデータ上で見たことと一致しましたから。まだMoto2スタイルのハフィスにとっては少しヒントになりました。

MotoGPバイクでは、とても遅くとても強くブレーキングして、素早く旋回し、可能な限り早くバイクを起こす必要があり、加速するのにパワーを使います。Moto2のマシンは全く違うんです。コーナーに入ったら、バイクを旋回させて加速します。

だから彼にはまだ、こういうスタイルがありますね。しかし私達はこれに取り組んでますよ」

 

ーすべてを前倒しさせなければならない

シャーリンの到着遅延は、この23歳のマレーシア人ライダーが既に8日間のウインターテストを逃したことを意味する。タイの後は、3日間のカタールでのテストだけで、これは彼が最高峰のグランプリを始める直前だ。

 

MotoGPでは掴んでいかないといけない多数のことがあります。電子制御、タイヤ、カーボンブレーキ……そして電子制御の中では、多くの分野があります。エンジンブレーキトラクションコントロール、アンチウィリープログラムは膨大です」

ゴヨン氏は言った。

「通常私はライダーにステップバイステップで掴ませるようにします、1度に一つづつやらせて。でもそれをやる時間がない。

今回私達にはシーズンの準備に6日しかない(タイとカタール)全てを前倒ししようとしています。彼がうまくやれたことを確認できたら、さらに他のことをしてもらいます。もしやりすぎたなら、それはそれでいい、ゆっくりにします。

私が普段やっているよりも少し早く、セットアップへの取り組みに挑戦します。すでに違った種類のタイヤを試しました、通常ならライダーの最初のテストでは1種類のタイヤしか使わないのですが。

俺達に何ができるんでしょうね?学ぶプロセスをちょっと前倒しようとするくらいですよ。カタールのレースでは、普通に入ってくるライダー達ほど、準備できないでしょうね。でも私達は過程を加速させますよ、彼が理解できうるかぎり」

 

ー電子制御はとても複雑

シャーリンのような新しいライダーにとって、理解が一番難しいことについて、ゴヨン氏は明確だ。

 

「電子制御はとても複雑です。例えば、ヴァレンティーノが電子制御に不満を話していたというのを、私は昨日読みました。ヴァレンティーノは電子制御に多くの経験があり、よく知っています。彼らはいくらか問題に直面したように見えます。

電子制御はとても複雑ですから、おそらく、ハフィスにさせることの一番最後のものになるでしょう。今我々は、我々自身の電子制御を扱っています。彼にいいと思うものを与えることになるでしょう。

試して、自信を持たせるためにも、こういうようなやり方のほうがいいんです、"オーケー、君はバイクに乗って、他のラインと他のことを試してみてくれ。我々は君のためにバイクを用意する。心配いらない。もし問題があれば、我々が直すから"、と断言できるようなね。

それから彼にとっても、このやり方ならセットアップのことを忘れてライディングに集中できます。最終的にライディングが仕事の8割ですから。

だから彼はよりライディングに集中しなくてはいけないし、彼にある小さい問題を解決するようにします、我々が現時点では全て自分達自身でやっている電子制御を使ってね」

 

ークルーチーフとは、落ち着き、制御、責任

ライダーはクルーチーフを通して、チームやメカニックとコミュニケーションを取る。

トラックでのセッションにおける混乱を避けるため、ライダーは通常、クルーチーフにのみ話をする。クルーチーフは、ライダーの言葉をメカニックやエンジニアが実行する技術的な変更へと、変換する責任を持つ。

 

「通常、ライダーはメカニックとバイクのことは話しません、バイクが壊れない限りは」

ゴヨン氏はそう確認した。

「私はセットアップと全ての事項について掌握するようにしています。だから全ての情報を集めます。通常、ライダーはバイクについてなにか尋ねたいなら、クルーチーフに聞く必要があります」

 

しかし、技術的な変化と同じくらい重要なのは心理だ。ストレスフルな状況で、ライダーを最適な心構えに保とうとする。

 

「私は常にライダーの目線に自分自身を置くよう心がけています。ライダーがベストなポジションにいるために、チームとクルーチーフに期待することは何か」

ゴヨン氏は言った。

「私は自分のクルーチーフにはピリピリした状況でも完全に落ち着いていることを期待するでしょう、例えば状況がどんどん変わっていく時とか、グリッドで雨が降り始めた時とかですね。

もしライダーが、周りで全員がパニックになっているのを見たら、それはストレスフルなことですよ。もし私がそうでなかったとしても、我々が完全にコントロールできているように見せるよう、私は努めています。我々がコントロールできるということ、我々にはメソッドがあって、問題が何であれ、修正することができるということ、私はライダーにそう思っていてほしいですね。

私が伝えたいメッセージは、"心配するな。君は乗る。我々は他の全てに責任を持つ"ということです」

 

ーこれは2017年型のヤマハ

チームメイトのザルコが2016年型シャーシに切り戻したが、これは2018年のファクトリーマシンのベースになっている。一方シャーリンは現在2017年型バイクに乗っている。

しかしながら、どちらのバージョンも謎だ、彼のチームにとってすら。

 

「去年のものですね、でも彼らは非常に多くのバージョンを持ってるんです」

ゴヨン氏は話した。

「ヴァレンティーノが去年使った物のうちの一つです。ヨハンが別のバージョンを使っている一方で、Tech3が使っているはずだった物ですね」

 

201831日、シャーリンとゴヨン氏はカタールのロサイルサーキットで、共に2度目のテストを開始する。

 

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訳してて気付いたけど、「so(だから、ですから、つまり)」を多用していた。これは理屈っぽい人の特徴って印象。

 

おまけ:

フォルガー期初頭のニコさん、公式のインタビュー映像からキャプ。ということは38歳。ビジュアルええわ…スタイルええわ…しゃべればイケボだわ……あー、ニコさんとレクオーナ2年間をリアタイで見れて、私は最高に楽しかった!その反面、来年の喪失感がもうガチにヤバくてキツくてしんどいw(レクオーナをどんな人が担当するかは、楽しみ。現ハスラム担の人がテッパンなのかな、スペイン人みたいだし。)

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